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色色(2)

 上司から渡された紙を参考にしながら杖を振り、色を付けていく。郊外とはいえ人は多く、色が付くたびに歓声が上がっている。

「ちょっと気分いいかなー」
「何を言ってるんだ大馬鹿」
「ひどくない?」

 言い争いをしながらも屋根や、木の実、ポスト。様々な赤だったものを赤にしていく。

「でもさー、色の魔法の調合わかってるんだから、わざわざ俺たちがやることなくない?一般市民にやってもらった方が早いし効率的じゃん」

 早くも面倒くさくなってきたソルトがぶつぶつと文句をこぼした。イサクは分かりやすく無視をし、シンヤは小さくため息をついた。

「ねーねーなんでなんでー」
「ソルトはどう思うの」

 面倒くせぇ、というのが透けて見える投げやりな調子でシンヤが言う。その間も手を休めることはなく、サクサクと色は塗られていった。

「えー…なんだろう。みんなが魔法使えるわけじゃないからかなー。不公平になっちゃう?」
「それでいいんじゃない」
「ちょ、ちょっと面倒くさがらないでちゃんと答えてよー」
「んー…ほら。あれだよ、あれ。ね」
「わかんねーし!」
「察せよ」
「横暴!」

 ぷう、とむくれてそっぽを向くソルトに、シンヤはため息をつく。

「色を付けるのは政府の特権、としておいた方が権力を握れるから、とかですかね」
「お、イサク君鋭い」

 褒められて、イサクは嬉しそうに破顔した。

「これを機に、統括できてない地域もしようって動きがある。色を分け与えてやるから、統治下にはいれって。そのために調合の仕方は門外不出。調合法教わるときも厳しく言われただろう?」

「なーるほど。そういえば軍人でも東区出身の子はこの任務に就けなかったって言ってたっけ。それって統治区域以外に情報が漏れないようにしていたってわけかぁ」

「そーゆーこと」

 なんだかなぁ、とソルトが腑に落ちない顔をする。

「大悪党が色を盗んで以来、政府の悪いところばっかり見えるっていうか…内部にいるからこそかねー。ひょっとして、大悪党の目的ってそれ?そのうち一般市民にも疑いを持つ人出てくるでしょう?そうやって政府を転覆させる気なんじゃ…あ、しくじった」

 リンゴの実を赤に染めながら話していたソルトが、急に声を上げ、イサクとシンヤはそちらを見た。

 その途端、小さな爆発がソルトの杖から起こる。

「いったたたた、二人とも大丈夫?」
「大丈夫?じゃないだろうこの大ばか者!」

 爆発に吹き飛ばされたイサクが立ち上がり、言う。身にまとった軍服は砂まみれ。何とも情けない格好になっている。

「怪我なかったんだからいいじゃーん」
「怪我、したけどね」

 どっこいしょ、と立ち上がるシンヤの額から一筋、血が伝う。

「うわー!ごめん!シンヤごめん!」
「ちょ、大丈夫ですか!」

 すぐに二人はシンヤに駆け寄り、声を上げる。シンヤは鬱陶しい、と思いつつ痛みに顔を歪める。吹き飛ばされた先が石塀で、そこに頭を打ってしまったのだ。全く運がない。

「あの、あちらにお医者様がいらっしゃるので。ご案内いたします」

 一部始終を遠目に見ていた一般市民の一人が建物を指差しながら言った。その建物は、確かに病院のようだ。

「すみません。お世話になります」

 自力で立ち上がったシンヤは石塀に手をつき、浅く息を吐いた。手にごつごつとした感触が伝わる。色がないと確かに不便だ。これが石塀とは、思っておらず、受け身を取るのを失敗してしまった。

 シンヤはうーん、と少し悩むように眉間にしわを寄せる。それを痛みをこらえていると勘違いしたソルトは、

「ごめんね!」

 と叫ぶとシンヤの体を肩に担ぎ、一目散に駆け出した。

「おい、こら。もっと丁寧に運べ!」

 イサクはそう言うと民衆に一つ礼をして後に続いた。残された人々は、「変わった軍人さんもいるんだなぁ」としばらく話題に尽きなかったらしい。
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テーマ : 短編小説
ジャンル : 小説・文学

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紫矢 陽炎

Author:紫矢 陽炎
紫矢陽炎と申します。
こどもがたくさんいる職場に無事転職しましたー!
読書、ギターを弾くのが趣味です。

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