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色色(4)

 ドドン、と打ち上げ花火が上げられたような大きな音が空気を揺らしたのはシンヤたちがダウトを発見した数日後の事だった。

 人々は何事か、と驚き家の外に飛び出した。

「上だ!」

 その声を合図にきょろきょろとあたりを見回していた人たちが、一斉に上を向く。

「なんだ…あれ」

 モノクロの空に浮かぶのは、虹色の球体。それはくるくると回りながら宙にとどまり続けた。

「色が…ある」

 人々は驚きながらも久しぶりに目にする赤以外の色に歓喜した。

「きれいねぇ」
「本当にきれい!」

 疑問に思いながらも純粋に喜ぶ人々と違い、政府は警戒をしていた。色関係、ということはまたダウトが何かを企んでいるのではないかと考えたからだ。

 政府はすぐに球の周りの住人を避難させ、軍を待機させた。ひょっとしたらダウトが近くにいるかもしれない、と巡回もさせる。

「で?あれ、大丈夫なの?すごい警戒されてるけど」

 球体を作った犯人にソルトが尋ねる。もちろんその犯人とは、シンヤの事だ。

「近づけそうにありませんね」

 三人は球体から遠く離れた廃墟に身を潜めていた。

「ああ、もう仕掛けは全部してきたから大丈夫…面倒だった。もう半年くらい魔法使いたくない…」

 どうやらシンヤは珍しく頑張ったらしい。ぐたりとバネの飛び出た椅子に倒れこんでいる。

「まさか魔力を使いすぎたんじゃ…」

 魔力を使いすぎるのは命を削る。イサクが心配していうとシンヤは首を横に振った。

「全然…余裕。起きるのが面倒なだけ」
「心配して損しました!」

 もう!とイサクが怒った時、パァン!と大きな音が聞こえた。

「なに?」

 二人がガラスのはまっていない窓に飛びつく。

「始まった」

 ふ、と楽しげにシンヤは微笑んだ。

「あ!球が破裂してる!」

 その光景は何とも美しかった。

破裂した球から飛び出した虹色が、きらきらと輝きながら、地上に降り注いだのだった。そして、その虹が触れたところから、色が生まれる。

 球があった場所を中心として、世界中が染まって行ったのだった。

「あ…きた」

 当然、シンヤたちがいる廃墟も色づき始めた。

「うっわ、ハデハデじゃん!」

 ソルトが嬉しそうに声を上げる。建物は蛍光オレンジに染まっていた。ソファは紫に、窓枠は緑に。

「イサク君にあわねー」

 なぜか黄色に染まった軍服を身に着けたイサクを見て、ソルトが爆笑する。

「貴様だって…なぜ似合う!」

 ピンク色の軍服をひらひらとさせるソルトは何となく似合っていて、イサクは悔しそうだ。

「ふはは、いいだろ!」
「いや、羨ましくはない!」
「シンヤは…ぷっ…くくっ…なんで紫」
「…最悪」

 紫はもっとも階級の高い者が身に着ける色である。シンヤはため息をついて立ち上がると、ぱっぱと服を払った。途端に、黒に染まる軍服。

「あ、ずるい!」

「悔しかったらやってみろ」

 憎たらしい!と叫ぶソルトを無視して、シンヤは窓の外のカラフルな世界に目をやった。そして、満足そうに微笑む。

 これでいい、と思う。

 色のない世界は不便なうえ、酷く味気なかった。やはり、色はあった方が楽しい。

「でも、これでまた階級ごとに色が決められちゃうんだろうねー。それってちょっとつまんないかな。折角今、自分が好きな色の服なのに…。これで見納めかー」

「いや…そうでもないと思うぞ。もうすぐ、色は階級を表す役割を失う」
「どういうことですか?」

 イサクの質問に、シンヤはまぁ見てろよ、とだけ答えた。説明するのはとても面倒だった。やはり慣れないことはするものじゃない。そう思い、シンヤは静かに微笑んだ。
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テーマ : 短編小説
ジャンル : 小説・文学

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紫矢 陽炎

Author:紫矢 陽炎
紫矢陽炎と申します。
こどもがたくさんいる職場に無事転職しましたー!
読書、ギターを弾くのが趣味です。

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