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忘れない 2

 加藤君が十歳の頃、あの島はまだ廃墟ではなく、少ないながらも人は住んでいたという。加藤君もその住人の一人で、やさしいご両親と、歳の離れた兄とともに暮らしていたそうだ。

 両親はもちろんの事、お兄さんは歳が八つも離れていた、ということもあり、随分と加藤君をかわいがってくれていたそうだ。お兄さんは当時十八歳で、本土の高校に通っていたため、平日の日中はおらず、その帰りがどんなにか待ち遠しかったか。懐かしむように、加藤君はそう話していた。

 事件が起こったのは、ある休日。加藤君とお兄さんは海で遊んでいたそうだ。嵐が近づいていた、ということもなく、穏やかな陽気だった。加藤君は泳ぎ、お兄さんはその様子を陸から見守っていたそうだ。お兄さんは幼少期、体が弱く、家にいることが多かったため、あの島の住人にしては珍しく、泳ぎが得意ではなかった。

 それが、悲劇を生んだのかもしれない。

 泳ぎを楽しんでいた加藤君に異変が起きた。足をつってしまったのだ。助けを求める加藤君。気が付いたお兄さんは海に飛び込んだ。

 結果として、加藤君は生き残り、お兄さんは死んでしまった。

 幼い加藤君はそれが認められなかった。自分のせいで、兄が死んだのだと、どうしても。だから毎日海に頼んだ。

 お兄ちゃんを返してください。

 頼み続けた。

「そうしたら、本当に海が兄を返してくれました」

 加藤君がそう言うと、佐田さんが何度聞いてもお前は大馬鹿野郎だ、と悪態をついた。私は話の腰を折った佐田さんを睨みつけた。しかし加藤君は気にせず、話を続けてくれた。

 本当のところ、「それ」はクマのぬいぐるみだったらしい。お兄さんが亡くなった所に流れ着いた、ただの人形だったそうだ。

 しかし、当時の加藤君は「それ」を「お兄ちゃん」として片時も離れなかったという。手をつないで、話しかけて。見兼ねたご両親がそのぬいぐるみを捨てた時は、発狂したようになって、泣き叫び、そのぬいぐるみを探し回ったそうだ。

そして「お兄ちゃんが呼んでた」といって海に入ろうとまでした。ご両親は仕方がなく、加藤君にぬいぐるみを返したそうだ。

 ぬいぐるみと一緒だと、加藤君はびっくりするほどおとなしくなった。そうして、加藤君はお兄さんの死から目を背け続け、その一周忌もいったい誰のためのものなのか、わかっていなかったという。

 そして、お兄さんの一周忌のすぐあと、加藤君一家は島を出たそうだ。ご両親は、海を見るのが辛い、と山の方へと越した。加藤君はいったい何が辛いのか、とわかってはいなかったけれど、また「お兄さん」を連れていかれては嫌だから、海から離れられることは都合がいいと思っていたらしい。

 そうして時は経ち、加藤君は十二歳になった。ぬいぐるみに話しかける加藤君は転校生ということもあり、学校では浮いた存在となっていた。しかし加藤君は気にしていなかった。

 「お兄さん」がいれば、どうでもよかった。

 そんな彼の前に『扉』が現れたのは、九月七日。お兄さんの命日の夜だった。寝よう、と「お兄さん」と一緒に布団に潜り込み、何となく目が覚めると、目の前に『扉』があったという。

 それは、加藤君にとってはとても懐かしい『扉』だった。お兄さんの部屋の、『扉』だったのだ。加藤君は起き上がると、迷うことなくその『扉』を開けた。もちろん「お兄さん」と一緒に。

 開けるとそこは、あの島だった。あの島の、お兄さんの部屋だったという。幼い加藤君は驚いたけれど、戻ろうとして扉をもう一度くぐっても、外に出るだけで、元の部屋には帰れなかった。仕方なく加藤君はお兄さんの部屋にいたけれど、ひょっとしたら外に誰かいるかもしれないと思い、外に出た。

 すると人を探すということも懐かしさに吹き飛んでしまったという。

「また、島で兄と遊べる。そう思いました」

 その言葉の通り、加藤君はお兄さんとの思い出の地を辿ったという。よく海を見た場所、けんけんぱをした通り、夢中で駆けた坂道。

 そして、加藤君は一本の木に到達したそうだ。島で一番立派な木。お兄さんはいつも加藤君が登る様子を下から見ていたそうだ。それを思い出しながら、加藤君は「お兄さん」を木の根元に置き、するすると登って行った。上から見た町は真っ暗で、誰もいる様子がなかった。

それがとても不気味で怖くて、半分泣きながら加藤君は木を降りて行ったそうだ。

「陽太君じゃない」

 そんな時だった。声を掛けられたのは。木の枝に、ちょこんと腰かける女の人は、加藤君の知っている人だったという。

「りえさん?」

 驚きで目をぱちくりとさせながら加藤君は尋ねた。

「よく覚えていてくれたわね」

 ニコリ、と笑うその人に加藤君はぞぞぞっと寒気がしたという。なぜかは、加藤君の言葉をそのまま借りて説明しよう。

「理恵さんは、島の有名人でした。若いころに都会に出ていき、恋人を連れて島に帰ってきた…過疎の進む島では、英雄扱いでしたよ。だけど、恋人さんが島暮らしに飽きてしまって、島を出ようとしたときに…理恵さんはその人を殺してしまった。そして自ら命を絶った…英雄が堕ち、島では大変な騒ぎになりました。だから僕もよく彼女の事は覚えていた。昔はやさしくしてもらっていたし」

 つまり理恵さんは、死者だったのだ。

「おばけ…」

 加藤君は動けなくなってしまった。怖くて怖くて、その手が首に伸びてくるのを、ただ見ていることしかできなかったそうだ。理恵さんは、ぶつぶつと、呟きながら加藤君の首を絞め始めたという。

「どうして?どうして私のものにならないの?どうして私のそばにいないの?あの人も私も同じになったじゃない。他の人達も、どうして私と一緒にいてくれないの?陽太君は私の傍にいてくれるわよね。私のものになってくれるわよね。そうでしょう?だって私があなたをこちらに連れてくるんだもの」

 今この言葉を書いていて、私はとても怖くなってしまった。実際聞いたわけでもない私がそうなのだ。きっと、加藤君はもっと怖かったに違いない。

苦しみに耐え、かすれた声で加藤君はお兄さんを呼んだそうだ。すると、「飛べ!」という声が聞こえて、その声を聞いた途端、加藤君は力を取り戻し、全力で理恵さんを振り払って木の上から飛んだそうだ。

 理恵さんから逃れたものの、島一番の高さを誇る木から落ちてしまっては命はない。そう覚悟していると、ふわり、と誰かに抱き留められたそうだ。

そうして、加藤君があっけにとられているうちに、その人はものすごい勢いで加藤君を連れてその場から去って行ったらしい。

 理恵さんは悔しそうに叫んでいたそうだ。

「この死にぞこない!」
「君もだろうに」

 そうつぶやく声で、加藤君にはその人が誰だかすぐに分かったそうだ。

「お兄ちゃん?」
「…陽太。ちゃんとつかまっておいで」

「お兄ちゃんだ!」

 それは、間違いなくお兄さんだったそうだ。今までは話すことしかできなかったお兄さんが動いて、自分を抱き上げてくれている。

そんな風に加藤君は思って、うれしくて仕方がなかったという。やがてお兄さんは木からだいぶ離れたところで加藤君をおろした。

「ごめんね」

 最初に、お兄さんが言った言葉だそうだ。

「あの言葉の意味が、未だに僕にはわかりません」

 加藤君はそうつぶやき、話を続けた。確かに私にも、お兄さんが謝る意味は分からなかった。

…話を元に戻そう。



きりどころがわからず長くなりすぎた感…読みづらくて申し訳ない。

そして読み直すと「…そうだ」を多用しすぎていて残念クオリティ。文章力のなさが光ってますな。

続きは明日更新予定!
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テーマ : 短編小説
ジャンル : 小説・文学

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紫矢 陽炎

Author:紫矢 陽炎
紫矢陽炎と申します。
こどもがたくさんいる職場に無事転職しましたー!
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