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ソラマチ5

 ずっとずっと好きだった人。

 去っていってしまった。あたしのことは、もう愛せないって。

 自分勝手。

 自分勝手な人。

 でも、引きとめたいと願うあたしも、自分勝手。

 いい人になるのって、すごく疲れるの。




「では、二日目の自由行動班を決めて下さい。五人から六人班にするように」

 先生の言葉で、私が一番嫌いな時間がやってきた。修学旅行のグループ決め。何で、出席番号順にしてくれないんだろうといつも思ってた。

 友人がたくさんいる子はいいのでしょう。その方が。でも…。

 いつだって、協調性のない人間は、苦しめられるの。

「綾香、あと三人か四人!」

 ぽん、と後ろから肩を叩かれて、私は驚いた。

「え…」

「早く人数ゲットしないとあまるぞ」

 へへへ、と笑いながら言う佐智。

「…私、いつも余ってしまうの」

「綾香は控えめだからなー。私もわりとあまるよ。こういうとき八方美人は困る」

 佐智は困ったように言う。でも、佐智と組みたいって人はたくさんいるでしょう?私なんかと組んでたら、そういう人達が嫌がるんじゃないだろうか。

「佐智ーグループ決めた?」

「二人グループ!」

「そりゃグループって言わないって。相変わらずあまってるねー」

「ひどい言いようだねよっしー。そんなコト言うよっしーはグループに入れてやらないんだから」

「ざんねーん、私はもうグループ決まってるもーん」

「く…綾香、出遅れたよ。急ごう」

「私は…」

 どうして佐智はいつもそんなにまっすぐなのでしょう。断られるのが怖いとか、でも、一人になりたくないとか。

 ごちゃごちゃ考えて動けなくなる私とは大違い。

 佐智、佐智。

 私はあなたにこんなにも甘えてしまっていていいの?本当は、あきれていない?

「修学旅行、楽しみだな」

 言いよどんだ私に、微笑みかける佐智。微笑みに、私はまた救われる。

「…うん、すごく、すごく楽しみ」

「さ、早く人数集めよう」

 佐智に手を引かれ、教室の中をさまよう。いくつかのグループができていたように見えたけれど、その中には人数が多すぎたところもあるみたいで、じゃんけんが頻繁の行われていた。

「あああ!負けた!もう一回!」

「ばーか、一回きりだよ。あきらめろ稲村!あまり組決定!」

「まじかー…」

 がっくりと肩を落とす稲村君に、佐智がおーいと手を振る。

「稲村余った?私たちのグループ入ってよ」

「お、助かる。ちょっと待って、もう一人余るから。おーい、お前ら早くじゃんけん。受け入れ先決まってるぞー」

「よーし」

 じゃんけんで次に負けてしまったのは染谷君だった。その負けてよかったという顔に、私は染谷君の気持ちがよくよくわかった。

「よ、よろしく」

「うん、こちらこそ」

 畏まった様子でこちらにやってきた染谷君に、私もなんだか改まって返事をしてしまった。

「なぁ、俺も入っていいか?」

「神谷。なに、お前も負け組?」

「いや、もともとそんなにつるむキャラじゃないから普通に余った」

 神谷大志君はニコリともせずに言う。あまり話したことはないけれど、つかめない人だと少し苦手意識があった。でも、私が苦手意識を持たない人なんていないし、良い機会なのかもしれない。

「神谷君が入ってくれたら最低人数いくし助かる」

 佐智が笑顔で言うと、神谷君は少しうろたえた様におう、と答えた。あれ、どうしたんだろう。

「じゃ、これで決定な。チームあまりもの」

「はは、それいいね」

 稲村君の言葉に、染谷君が笑った。

「えー、どうしよう!負けちゃった!」

「ごめん華帆…恨まないでね!」

「どっか入れて!」

 近くで騒ぎが起こったと思ったら、またもじゃんけんで負けてしまった子が出たみたい。飯島華帆という女の子だ。私とは対極にいるような、オシャレ大好き、おしゃべり大好きといった様子のいわゆるギャルっぽい子だった。

「こっちだめだよー」

「男子だけのグループでよければココいいぞー」

「うーん…お互い気を使っちゃいそうだからいい」

「そっかぁ」

 なかなかグループが決まらないみたい。こういうとき、どうして二人で抜けるって選択肢がないんだろうと思うけれど、私たち二人で抜けるわっていうのも、少し感じが悪いのかもしれない。でも、一人でさまよう心細さに比べたらマシなような気がする。

「飯島ちゃん、ここのグループは?あまりもの組!」

 そんな飯島さんに佐智が声をかける。

「げっ!川合さん…」

「え、あ、ごめん。迷惑だったか!」

 しょんぼりと佐智が肩を落とす。すると慌てたように飯島さんが首を横に振った。

「ち、違うの!嬉しいの!グループに入れてほしいし…。でも今日は…今日だけはゴメンね!」

 私の名前も入れておいて、と叫ぶと、飯島さんは教室をかけだして行ってしまった。

「…私、嫌われてるかな」

 佐智がぽつんと言う。

「そんな感じじゃなかったと思うけど」

 私がフォローしていると、飯島さんがはじめにいたグループの子がやって来た。

「ごめんねさっちゃん。あの子今スゴイ複雑なの」

「複雑?」

「今日彼氏と別れたらしいんだけど、どうもその彼氏ってやつがさっちゃんに惚れたから華帆を振ったらしくってさ」

「…最悪だ」

「ね…ほんと最低男と付き合ってたと思うよ。自分の責任全部放棄しちゃってさ。さっちゃんのせいにしてる」

 ぷぅ、とその子は頬を膨らませた。

「華帆は基本いい子だからさ、さっちゃんを恨んだりしてないんだけど、やっぱ複雑な気持ちなわけ。下手したらさっちゃんに恨みごと言っちゃいそうで怖いって言ってたし。多分少ししたら治ると思うから、今日はそっとしておいてやってくんない?」

「そうだね。グループのメンバーにはしていいかな」

「うん、あの子もそうしてほしいと思うし」

「OK。教えてくれてありがとう」

「いえいえ。あ、今言ったことは内緒だよ」

「もちろん」

 そうして彼女はグループに戻って行った。

「飯島さんって、ものすごくいい子なんだね」

 佐智が微笑む。

「うん。ちゃんと人のこと考えられるのスゴイわ。自分が苦しいのに」

「ますます修学旅行、楽しみだね」

「…飯島さんと仲良くなれるといいな」

「なれるよ」

「うん」

 全くタイプが違う人だけれど、人のことを考えられる、思いやりある人なんだ。彼女ならば、同じグループでも上手くやれそうな気がする。

 こうして波乱の班決めが終わり私はホッと胸をなでおろした。



何が書きたかったといえば、綾香が「自分って人に恵まれているんだな」と気がついたということでした。分かりづらっ!これで、もう少し積極的な彼女が描けるのではないでしょうか。

あとは飯島という人間がどんな子なのかを書きたくて、チラッとだけれど出しました。恋する失恋乙女なのですが、彼女は人のせいにしたくないと考えます。

でも、心は抑えきれずに逃走。

自分がいっぱいいっぱいな時に人に気を遣える人ってすごいですよね、と思いながらも、そういう人の心をちゃんと分かってあげてねって気持ちも込めて書きました。
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テーマ : 短編小説
ジャンル : 小説・文学

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紫矢 陽炎

Author:紫矢 陽炎
紫矢陽炎と申します。
こどもがたくさんいる職場に無事転職しましたー!
読書、ギターを弾くのが趣味です。

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