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竜の涙12

 そこから園長の行動は早かった。

旅の準備を二人分用意すると、それをもって、警察署へと向かった。
トーマと大荷物を警察署の近くへと隠すと、拘束されているルイスのもとに向かう。

園長は町のみんなから信用されているため、とてもそれは簡単なことだった。

「文句を言ってやりたい。二人きりにさせてください」

 そう頼んで、人払いをすると、檻越しに園長はルイスに話しかけた。

「ルイス。お前の為に、私のところに来た人がいたよ」

「…何のことだ。俺はそんな奴知らない」

「庇うんだね。その相手が大切なのか」

 言われて、ルイスは園長に背を向けた。

「だけど、相手もお前の事が大切なんだ。自分の立場を悪くすることを、厭わないくらい。その気持ちから逃げるのは、卑怯だと思わないか」

 キィ、と檻が開く音がして、ルイスはぎょっとした。慌てて振り向くと、園長が檻を開けたところだった。

「何をしている?」

「ルイス。ずっと私はお前の事を気にしていた。私と同じ境遇の子ども…私はこの町に救われたが、お前は救われなかった。ただ、それだけなんだ。私たちの違いは」

 園長がそういうと、ルイスに手を伸ばした。ルイスはその言葉を聞きながら、その手を取り、固く握った。

「いや…俺も、この町に救われていた。だけどそれに気づくことができなかったんだ。お前はそれに気が付いた。その位、お前と俺は違うさ」

「そうか」

 園長は、微笑んだ。ルイスもまた、微笑んだ。檻からルイスが出た。

そして檻の中の布団を盛り上がらせて、まるでルイスが眠っているかのような工作をすると、人目を気にしながら二人は警察署から出た。

 運よく、誰にも見つかることはなかった。園長はルイスを待たせて一度署に戻り、帰る旨だけ伝えて再び警察署を出た。

 そして、トーマの待つ場所にルイスを連れていくと、トーマが飛び出し、ルイスに抱き付いた。

「ルイスさんのバカ!」

 ぎゅうっと自分を抱きしめ、涙を流す少年を見て、ルイスは初めて自分がしたことを後悔した。こんなに、自分の為に心を動かしてくれるとは、思っていなかったのだ。

「すまない」

「許しませんよ。マスターさんも、どんなに心配していたか」

 そんな二人の様子を見ていた園長が、話し出す。

「ルイス。トーマ君に免じて、今回は見逃そう。けれど、もう二度と、この町に帰ってきてはいけない。いいね」

「…俺は、どうすればいい?」

「ルイスさんは、僕と一緒に旅に出るの!」

 途方に暮れたように言うルイスの腕をつかみ、トーマが言う。その言葉を聞いて、ルイスは驚いてトーマを見た。

「旅に?」

「そう!ボディガード、しっかりやってくださいよ。なんせ僕は命の恩人なんだから…」

 自分が旅に出るなんて、考えてもみなかったルイスは、困惑した。

「ルイスさん。僕も一緒です」

 トーマの腕をつかむ力が強くなった。ルイスは、この少年が自分を助けるためにどれほど勇気を出したかを考え、動けなくなってしまっている自分を恥じた。

 この、大切な人が助けてくれた命を、簡単に捨てるわけにはいかない。そしてそのためには、旅に出るしかないのだ。

 ルイスは決意し、うなずいた。その様子を見た園長は、黙ってルイスに荷物を渡す。

「これは…」

「しばらくはこれで過ごせるだろう」

「どうして…俺は、あんたの大切な竜を殺してしまったのに」

 ルイスに言われると、園長は少し苦い顔をした。

「確かに、私は君を許せない。だけれど、君の事を、仲間のように感じてしまうんだ。どうしても」

「あんたと俺は違う」

「それでも、同情してしまうんだ。昔の自分を思い出して。君は、怒るかもしれないけれど」

 園長が苦笑しながら言うと、ルイスは首を横に振った。

「いや、感謝する。ありがとう。そして、竜を殺したこと…悪かった」

「…失われたものは戻らない。それよりも私たちは、これからを考えなければ。『竜の涙』は実のところ、まだまだ溜めてあってね。一気に流すと希少価値が下がるからね。上手いことやるさ。私は、この町を愛しているからね。そう簡単にあきらめない」

 園長はそう言ってほほ笑んだ。その顔を見て、ルイスはうらやましくなった。大切なものを守ることに誇りをもっている顔だった。

ルイスは大切な人を守ろうと思って失敗してしまったけれど、いつか園長みたいな顔をできる日が来るのだろうか。

 そう考えて、トーマを見ると、行きましょうと腕を引かれた。

「ありがとう。もう、二度と会うことはないだろうけれど、忘れない」

「私も」

「マスターに…謝罪と感謝を伝えてくれないか」

「構わない。君の言葉をそのまま伝えよう。なんと伝えればいい?」

 園長に尋ねられて、ルイスは考えた。いろいろと話したいことはあったけれど、一番に伝えたいことだけを、言葉にしたいと思った。

 トーマが、心配そうにルイスを見上げる。旅に出るルイスの決意が鈍ってしまったのかと思ったからだ。それほど長い時間ルイスは考え込んでいた。

 しかし、ルイスは考え抜いて、最も伝えたい言葉を、見つけることができた。

 顔を上げ、園長に伝える。

「マスターに、出会えてよかった…そう、伝えてくれ」

 その言葉を聞いて、園長はいい言葉だ、とつぶやき、必ず伝えることを約束した。
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テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

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紫矢 陽炎

Author:紫矢 陽炎
紫矢陽炎と申します。
こどもがたくさんいる職場に無事転職しましたー!
読書、ギターを弾くのが趣味です。

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