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ソラマチ7

涙を流すことに意味はない。

ただただ意味もなく流れてくるんだ。

何の感情がこもっているわけではない。

同情されたいわけでもない。

それなのに。

いったい僕は何のために涙を流すのだろうか。





学校の帰り道。いつもは喫茶店くらいしか寄り道をしないけれど、今日は花屋に足を運んだ。

今日はこれから行かなくてはならないところがたくさんあるのだ。

「ありがとうございました」

花屋のお兄さんは優しい笑顔でそう言うと、僕に花を差し出した。

普通にもつのがなぜだか照れくさくて、肩に担いでお店を出た。

でもやっぱり、そんな風にもつ方が目立つなと思って、そろりと持ち直す。

家へと向かう道からそれて、まず最初の目的地…お墓に向かった。

今日は命日だ。

今日は姉の命日だ。

考えただけで自然と涙がこぼれた。

「わ、止まれ」

慌ててつぶやき、目をこする。

別にもう、悲しくはないのに。

とっくに僕は吹っ切ったのに。

油断するとすぐ、涙があふれ出てしまう。

ごまかしごまかし歩いた。楽しいことを考えることにした。

以前までだったら、テレビ番組だとか、漫画だとか、そういうことばかり考えていたかけれど、今は違う。

ちょっとずつ、自分の輪は広がっていって、今何よりも楽しみなのは、修学旅行だった。

変わり者の友人ぞろいだけれど、彼らといると心地よい。

稲村君は場の雰囲気を明るくしてくれるし、遠藤さんは和ませてくれる。

川合さんは…わぁっと騒がしいのに、なぜだかそばにいると落ち着く。

今はこの三人といるのが一番楽しいけれど、飯島さんとも、神谷君とも今度の修学旅行で仲良くなれるといいなぁ。

そんなことを考えていたら、いつの間にやら墓地についていた。

目的のお墓の前に来て、簡単に掃除をし、花を供える。

お経とか、そういうのはわからないから、簡単に手を合わせて姉に挨拶をした。

「今年も来たよ。一番乗り、かな」

またなぜか、涙が出た。

情けないなぁと思う。

同時に申し訳ない気持ちにもなる。

だって僕は、悲しくて泣いているわけじゃない。これはもうきっと、惰性で泣いているのだ。

こんな僕に気を使った両親は、わざと墓参りの時間をずらすことを提案してくれた。

泣き顔を見られたくなかった僕は、すぐにうなずいた。

でも本当は、家族そろって来たい。

それなのに、涙は止まることがない。

悔しいなぁ。

姉だって、みんなで来てほしいだろうに。

「ごめんね、いつも。また来るよ」

涙の波が収まったところで、僕は一言声を掛けてから墓地を後にした。

次に向かうのは、神社。昔よく姉と遊んだ場所だ。

命日に姉との思い出をなぞるようになったのはいつからだったろうか。

ナルシストっぽく感傷に浸りたい気分なのだ。この日は。

ゆるゆると歩いてたどり着いた神社は、全く人気がなく、姉と遊んだ時の姿そのままで、なんだか安心した。

石段に腰を下ろし、落ち着く。

涙がまた流れそうになるのをぐっとこらえて上を向く。空は茜色に染まっていた。

と、足音。

たんたんたんと、規則正しい足音が聞こえてきて、僕は慌てて立ち上がった。

そして、少し残念に思いながらその場を後にしようと石段を下りかける。

「あ」

「お?」

でも、見知った顔で思わず足を止めてしまった。

「染谷君」

「奇遇だね。というか、この神社来る人いるんだ」

「それは私も言いたいよ」

くすりと笑うのは、川合さんだった。

最近よく会う。

「ひょっとしてお邪魔しちゃった感じ?」

「あーえっと」

そんなことないよ、というとっさの嘘がつけなくて視線をさまよわせていると、また少し笑って川合さんが手をひらひらとさせた。

「ごめんごめん。私は第一の秘密基地をあきらめて、第二を目指すから気にしないで」

「そんなに秘密基地持ってるの?」

「ふふ、まぁね。第五くらいまではある」

「そりゃすごいや…でも、今から行くのも億劫じゃない?別に、川合さんが気にならなければここにいて」

言いかけてから、何様だよと思って顔が熱くなる。何かもっといい言い方があったんじゃないだろうか。

「いていいの?」

からかうような調子で顔を覗き込まれた。

「イテクダサイ」

「染谷君はかわいいなぁ」

からからと川合さんは笑った。そして、僕の少し上の石段まで上がると、腰を下ろした。

僕も、その場で腰を下ろす。

しばらく不思議な沈黙。

後ろで気配はしているのに、誰もいないような空気感。

やっぱり、川合さんといると、落ち着くなぁ。

そう思った瞬間、またなぜか涙が出た。

もういったい何なのだろうか。

僕の涙腺はついに壊れてしまったのだろうか。

ばれてないよな、と内心びくつきながら、僕は乱暴に涙をぬぐった。

「泣いてる」

ギクッとする。まさか、突っ込んでくるとは思わなかった。普通、気付いてもあえてスルーするものなんじゃないだろうか。

「泣いていない」

「へぇ」

「…涙は出る。でも、泣くとは違うと思う」

「どう違うの?」

「…感情が伴わない涙が流れたって、泣くとは言わないと思う」

「哲学的だね…いや、ロマンチスト?」

どっちだっていいから放っておいてくれ。その一言が言えずに、なぜだか僕はしゃべり続けた。

「今日は姉の命日なんだ。この日はなぜか、もう悲しいとか思っていないのに、涙が出てしまう」

「…そっか」

「自分でも情けなくて、止めたいんだけど、なぜか止まらないんだ。どうして涙が出るのかわからないし」

愚痴のように言ってしまうと、うーんと困ったような唸り声が返ってきた。

「あ、ごめん。なんか、変な話しちゃって」

「変とは思わない」

きっぱりとした口調で、川合さんは言ってくれた。

「話してくれたことがうれしい。力になれないのが悔しい。そんなところ」

「…はじめて、話せたよこんなこと。それだけでありがたい」

「みんなそういうんだ、相談してくる人は。話せただけでいい、楽になった。それは確かにそうなのかもしれない。でも僕は自己中心的だから、やっぱり悔しいんだ」

思わず振り返ると、本当に悔しそうな顔をした川合さんがいた。その顔は、僕の情けない相談を真剣に受け止めて、考えていてくれている顔だった。

ぽかんとしてしまった。

確かに、川合さんは自己中心的かもしれない。相談者が、満足したといっているのに、取り合わないのだから。

「頑固だなぁ」

「否定できない」

それでも、僕は笑ってしまった。涙を流しながら笑ってしまった。

「相談役には向かないね」

「よく言われる」

「でも、ありがとう。気持ちは受け取ってよ?」

「ああ、分かった」

わかったといいながら、川合さんの表情は晴れなかった。本当に頑固だなと思う。

「いつか…いつか涙もとまるのかもしれないし、僕はその日を待つよ」

「悠長だなぁ」

「その程度の悩みだってこと」

本当は、情けなくって悔しくって苦しくって。

なんでなんだって、自分を問い詰めていた。責めていた。

でも、今は。

今だけかもしれないけれど、心が軽い。

だから、そんな言葉が口から出た。

「暮れてきたな」

いつの間にやらすっかり日常の口調から変わった川合さんがぶっきらぼうに言う。

「帰ろうか」

「…いや、僕はもう少しここにいる」

「そう?暗くなると危ないよ」

「気にしないでくれ」

「わかった。僕はこれからまた、姉との思い出に浸る旅を続けるよ」

「おー、いってらっしゃい詩人さん」

「うん。いってきます」

立ち上がって軽く砂を払う。

また明日、と手を振る川合さんに振り返しつつ、僕は石段を下って行った。




お久しぶりのソラマチです。

今回は何となく存在感の薄い染谷君を出したくて書いてみました。

涙が止まらないってのは本当に厄介で、僕なんてなぜか目の前で人が泣いている(テレビ越しでも)だけで涙が流れます。理由がわからなくても…これ、なんかもう病気じゃない?くらい涙腺弱いです。

そんな悩み?を染谷君にシフトして、佐智に相談してみたところ、「答えは出ない」が答えでした。なんということでしょう…。

それでも真剣に悩んでくれる人がいることで、ちょっと染谷君は救われました。佐智は納得していないようですが、染谷君的にはOKなので、僕的にもOKということにしましょう(訳が分からない)

さて、次はなぜ佐智が神社に来たのか。そしていつまで神社にいるのか、あたりを書きます。
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テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

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紫矢 陽炎

Author:紫矢 陽炎
紫矢陽炎と申します。
こどもがたくさんいる職場に無事転職しましたー!
読書、ギターを弾くのが趣味です。

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