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関係 中編


 兄が高校生になり、俺がまだ中学生だった時。

 家族の団欒で、兄に彼女ができたことが分かった。俺は少し驚いた。兄にはそんな様子は一切なかったから。ただ、父はさすがに兄の事をよく見ていたようで、最近落ち着きがなかったからな、とうれしそうに語っていた。

 一度うちに連れてきなさいよ、と言ったのは母だ。母と兄、俺と父の関係は良好で、突っ込んだ話もできるようになっていたからこその言葉だった。

 兄は照れたように笑いながら、気が向いたら、なんて答えていた。

「ちぇ、いいなぁ」

 そんなことを俺は言っていたと思う。

 兄が彼女を連れてきたのは、それからすぐの事だった。黒髪が豊かな女の子で、中学生の俺からは、すごく大人っぽく見えた。実際は、兄と同い年だったのだが。

 母は彼女を褒めちぎり、歓迎した。俺は、思春期の少年らしく、部屋に閉じこもっていた。やがて父が帰ってきて、しばらくして彼女は帰って行ったらしい。そこでどんな会話があったのか俺は知らない。

 知っているのは、兄がその数日後、彼女と別れたということだった。

 何があったのか。普段は無関心な兄の事でも、女の子の話題ということで、俺はとても気になった。

 父も母もあの日何か失礼をしてしまったかと気にしていたが、兄は笑ってそれはないとだけ言った。

 彼女と俺の問題だと。

 二人はそれ以上聞くことはなかった。父も母も、子どもたちの事情にすぐ首を突っ込みたがる過保護さは持っていたが、それ以上に息子の心を傷つけまいとすることに必死だったから。

俺も、さすがに傷心の兄の心を抉るようなことはできず、こちらから聞くことはなかった。

 それが、学校から帰り、自分の部屋で寝転がって漫画を読んでいた時だった。突然兄がノックもせず部屋に入って来た。

 本でも借りに来たのかと、思っていると、兄は俺が寝転ぶ傍にどっかりと座りこんだ。

 どうしたのか、こちらから聞くと、なんだか負けのような気がして、俺は無関心を装って漫画を読み続けた。

 兄はずっと黙っていた。ずっとずっと黙って、たぶん、俺を見つめていたのだと思う。痛いほどの視線を感じていたから。

 やがて漫画を読み終わってしまい、俺は全く内容が頭に入っていない漫画を放り出してついに兄に尋ねた。

「なに?」

 兄は、珍しく俺に笑いかけた。

「ファザコンは無理だって」

 最初は、何のことを言っているのかわからなかった。兄の笑みが、自嘲に変わって俺はハッとした。

「それで、振られたの?」

「ああ」

 意外だった。確かに兄は父の事が大好きだが、普段からべたべたしているというわけでもない。しかし、今考えると、色々と聡い時期の女の子は、兄の挙動や言動から、「そういったもの」を敏感にキャッチしてしまったのだろう。

 なぜ兄が俺にこんな話をしてきたのか、今でもわからない。

「へぇ」

 俺はそれだけ返して、身を起こし、兄の顔を見た。

 無表情だった。

「それじゃ、俺はマザコンのせいで振られるな」

 そう言って笑うと、兄もにやりとした。

 兄の事をあんなにも近くに感じたのは、この時だけだった。
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テーマ : オリジナル小説
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紫矢 陽炎

Author:紫矢 陽炎
紫矢陽炎と申します。
こどもがたくさんいる職場に無事転職しましたー!
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