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夢の舞踏会 1

友人からもらったお題シリーズ最終回!お題は「舞踏会」でした!
もらった時、正直「縁なさすぎワロスww」と思ったははっ!
というわけでものすごいカオスな作品ができました。ごめんなさい。そしてお題をありがとう!
無駄に長い&落ちが迷子です。


 悲鳴のようなヴァイオリンの音に、ハッと我に返った。自分は何をぼーっとしていたのだろう。

 このような場所で、恥ずかしい。

 誰かに見られていなかったろうかと、さりげなさを装って、あたりを伺う。

 なぁに、心配することは何もなかった。皆、きらびやかな世界に酔いしれ、壁と一体となっている俺の事など目に入っていなかったようだ。

 ほぅ、と安堵から息を吐く。

 安心したら、急に空腹感が襲ってきた。何か腹に入れようと真っ白なテーブルクロスの敷かれたテーブルに近づく。

 並べられていたのは、それはそれは豪勢な、そして珍しい食事だった。なんだこれは?と思いつつ、見た目がおいしそうなものを皿に盛る。

文明開化を謳うこの催しに参加するのも、もう何度目になるだろうか。いまだに慣れぬ。舞踏会、などというものには。
行儀悪くフォークを噛みしめ、壁に背を付ける。

 なぜ人前で踊らねばならないのだ。眼に痛いほどまぶしいシャンデリアとやらも気に食わない。一番気に食わないのは、こんなところで軟派にも格好を付けながら女性と踊っている野郎どもだが。

「そんな、親の仇を見るような目で見てやるなよ」

 ひらひらとフロアを舞う連中を見つめていると、からかうような軽やかな声が聞こえてきた。

「吉野」

「相変わらず、踊らないのかい?」

 口調は穏やかで、責めるような色はない。

「お前には言われたくない」

 同期であり、同い年でもある吉野とは気が置けない仲だ。舞踏会でもよく顔を合わせるが、こいつが踊っているところを俺は見たことがなかった。

「ご機嫌斜めだな」

「…別に」

 真面目に取り合うのも馬鹿馬鹿しくなって、ため息交じりに手元の料理に口を付けた。

 女性の着ているドレスの裾が翻る。くるり、ふわり。人気は薄い桃色なのだと、うわさで聞いていたが、その通りどこもかしこもピンクだらけだった。

 目がちかちかして来たな。

 鮮やかな色にまぶしさを感じて、目を細める。踊るのを見るのすら嫌になってきて、手に持った皿に目を落とし、何か肉の塊を口に含んだ。

 意外と固かったその肉をがりがりと噛み砕き、ごくりと飲み込む。うまいな。意図せず漏れた言葉を、隣の男が拾い上げる。

「それ、なんていう料理?」
「さぁ?知らないな」

 俺の返事を聞いて、吉野はふふ、と笑った。そして俺がまた一口食べると、その笑みをにやりとしたものに変える。

「気持ちのいい食べっぷりだな」
「そうか?行儀が悪いとよく怒られはするが」
「行儀云々の問題ではないさ。『命を喰らう』という言葉がぴったりの食べ方だ」

 吉野の言葉に眉をしかめる。

「褒められている気がしない」
「褒めているとも」

 悪びれもせず、吉野が言う。きっと本心なのだろう。しかし、『命を喰らう』など、まるで化け物が人間を食っているような言い方ではないか、と思う。

「怒ったかい?」

「いや…。しかし『命を喰らう』というのであれば、俺でなくとも皆そうだろう。まるで俺だけ化物のような言い方はよしてくれ」
「はは、ごめん。化け物のよう、なんてニュアンスは含めたつもりはなかったのだけれど。…そうさね、確かに俺もお前もあそこのきれいな子も」

 と、こっそりと吉野が指差したのは、踊っている中でも一段と煌びやかにのびのびと踊っているお嬢様だった。流行りよりも己の趣味を重視したのか、レモン色のドレスを身にまとっている。

「みんな命を喰らって生きている。でも、そんなことは忘れがちだ。人間とは、業の深い生き物だね」
「…そうだな」

「前園が食べている様子を見ると、俺はそのことを思い出すんだよ」
「お前は俺が物を食う時そんなことをいつも考えていたのか」

 まあね、と笑う吉野に深々とため息をついて見せる。これからこいつの前で物を食うのは止そう。

「これからも、俺の前で堂々と食ってくれよ」
「無茶を言うな」

 心の中を読まれたようで、気持ちが悪い。

「えー…俺は吉野が物を食べる姿、好きなんだけど?」

 はぁ?と思わず険しい顔になる。人の食べる姿を見て自分の罪深さを思い知らされる人間が、どうしてそれを好き、などと言えるのか。

「だってさ、吉野はその口で、女を口説くんだろう?」
「当たり前だろ。俺に口は一つしかない」

「命を喰らったその口で、愛をささやくんだろう?」

 こいつとの会話はあきらめた方がいいのだろうか。全く何を言いたいのか見当がつかない。と、言うより、理解したくない。

 そんな俺の気持ちにかまわず。吉野は続ける。

「人間の愛は、罪深い。…お前を見ていると、客観的に俺はそれを知ることができる。客観的でありながら、友人というとても近い立場でそれを観察することができる」

「吉野、いい加減にしろ。気分が悪い」

「…たまんねぇよな」

 唐突に、すべての音が消えた。踊り舞う人の呼吸。わんわんと響き渡る異国の音楽。食器の触れ合う音。

「見てみろよ。みんなお前に夢中だ」

 言われて、吉野から視線を外し、あたりを見回す。

 全員が、俺を見ていた。

 さっきまで踊っていた女性、そしてそのパートナーも。ワインをせっせと運んでいた給仕も。俺たちのように壁際で談笑していた紳士たちも。

 全員が、見ていた。

「たまりませんわ」

 静まり返った異様な空間に響いたのは、一段と輝いていたレモン色のドレスを着た女性の声。

 それが合図だったかのように、全員がうっとりとため息を漏らした。

 その合唱にぞぞっと鳥肌が立つ。俺が体を震わせたその時、一斉に会場にいた女性たちがものすごいスピードで俺に押し寄せた。

「や、やめろ。寄るな!」

 あまりの恐ろしさに声を裏返しながら後ずさりするも、壁際に立っていた俺に逃げ場などなく…。

 俺の情けない声は、誰にも聞かれることなく、人波にかき消されてしまった…。

 …これは、悪夢だ。

 そう思った瞬間、じりじりじりじりとけたたましい音が耳元に響き、俺はバッと身を起こした。

「うわあ!」

 眼前を埋め尽くしていた女たちは姿を消し、もちろん俺の隣に吉野はいない。

「ゆ、め…」

 震える声で呟いて、ホッとした。目覚ましを止めて時間を見ると、朝の六時だった。準備をしなくてはと着替えて、カバンの中に教科書を詰め込む。

「あ…これのせいかよ」

 机の上に広げてあった歴史の教科書を見て、先ほどの悪夢の原因が分かった。文明開化。そういえば、昨日習ったばかりだ。想像上の鹿鳴館は、思い出そうとしてもぼんやりとしか思い出せなかった。

 そもそも、どんな夢だったっけ?準備をしているうちにどうやら忘れてしまったようだ。

 しかし、悪夢だったという印象はしっかり残っているので、むしろ忘れてよかったと思う。

 こうしてすっかり俺は夢の事を忘れて、学校へと向かったのだった。
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テーマ : 短編小説
ジャンル : 小説・文学

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紫矢 陽炎

Author:紫矢 陽炎
紫矢陽炎と申します。
こどもがたくさんいる職場に無事転職しましたー!
読書、ギターを弾くのが趣味です。

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