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初こい 序

 自分はきっと、色恋沙汰とは縁なく、一人で生きて、一人で死んでいくんだろうなぁ。

 二十を過ぎたころからそう思い始め、三十となった今、ぼんやりとしていた予感は、はっきりとした形になりつつあった。

 友人と仕事と、ちょっとの酒。好きな音楽に、小説・漫画・映画。そんなものがあれば、僕は満足だった。

 それが大きく変化したのは、ある大雨の降った日だった。仕事帰り、天気予報を見ていたにもかかわらず、傘を忘れてしまっていた僕は、雨宿りをするために、入ったことのない喫茶店を訪れた。

「いらっしゃいませ」

 夜も遅かったせいか、店内は空席が目立っていた。ゆったりとしたつくりの椅子に腰を落ち着けると、寒さで強張っていた身体が解きほぐされていく心地がした。

 注文を取りに来てくれた子に、ブレンドコーヒーをお願いする。

「タオル、お持ちしましょうか?」

「大丈夫。濡れる前にここに駆け込んだんだ」

 細やかな気遣いに感謝しつつ、メニューから顔を上げてその店員さんの顔を初めてしっかりと見た。

 落ち着いた声色に反して、随分と若そうだ。僕の言葉に、それはよかったと笑う姿がとてもまぶしく思えた。

 それ以来、コーヒーの味やまったりと過ごせる空気感を気に入った僕は、その喫茶店に足繁く通うようになったのだった。

 通い始めて半年ほど経ったころだったろうか。この日も僕は、いつも通りコーヒーを注文して、お気に入り作家の新刊を読んでいた。

「あの」

「はい?」

 いつもと違ったのは、店員さんが注文を取る以外で声を掛けてきたこと。本にしおりを挟んで顔を上げると、初めて店に来た時に対応してくれた店員さんがいた。

 彼女にはもう何度も会っていた。通いだしたころはたまに見かける程度だったけれど、最近は店に行くといつも働いていて、随分熱心なんだなと思って印象に残っていた子だ。

「すみません…あの」

 口籠るばかりで、一向に話し出す気配のない相手に、どうしたのだろうと首をかしげていると、他の店員さんたちがこちらの様子をちらちらと伺っているのが目に入った。

「なにか、言うように言われた?」
 
 注意されるようなことをしていただろうかと心配になって問うと彼女は慌てて首を横に振った。

「ち、違うんです!私が、お話したいことがあって。あの…これ、読んでもらえませんか」

「手紙?」

「あ!できれば、私のいないところでお願いします!お邪魔しました!」

 四つ葉のクローバーが印刷されたかわいらしい封筒は、彼女が力を入れてしまったせいか、少しよれてしまっていた。なんなのだろうと彼女が逃げるように去って行ったあとを目で追うと、他の店員さんに囲まれて何かを必死に話している様子が見られた。

 ラブレター。

 そんな言葉が頭をよぎって、慌てて首を横に振る。そんなバカな。三十のおっさんが何を考えているんだ。

 しかし彼女の反応を見ると、つい期待してしまい、どうしても中身が気になった僕は、いつもよりも早めに席を立って店を出た。

 会計してくれたのは、手紙をくれた子ではなかった。それに幾ばくかのさみしさを感じつつ、足早に家に帰ってもらった封筒を開いた。


 それは、期待通りのラブレターだった。



甘酸っぱくなーれ☆…無理ですね、わかります!!(笑)

ちょっぴりビターなお話になる予定。めったに書かない恋愛小説なので、丁寧に書いていきたいと思います。
心が折れないように、短くてもどんどんアップしてしまうかもしれません…
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テーマ : 短編小説
ジャンル : 小説・文学

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紫矢 陽炎

Author:紫矢 陽炎
紫矢陽炎と申します。
こどもがたくさんいる職場に無事転職しましたー!
読書、ギターを弾くのが趣味です。

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