コンテントヘッダー

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
コンテントヘッダー

初こい1

 出だしはやや緊張気味に、けれど書くうちにどんどんと言いたいことがあふれてきたのか、流れるような字で書かれた想いに、僕は圧倒された。

 初めは、からかっているのかと思った。仕事仲間との冗談交じりの罰ゲームなのかもしれないとも。しかし、最後まで読み切った時、そんな考えはすっかりと消え失せていた。彼女の選んだ言葉は真摯な想いを僕に伝えていた。

 僕はすっかり困ってしまった。告白なんて、したことはあってもされたことなど一度もない。しかも、お互い名前も知らない相手だ。年齢差だって相当だろう。ひょっとしたら、歳上への憧れを恋愛感情と勘違いしているのかもしれない。

 ごちゃごちゃと悩み、やっと返事をする決心がついたころには、一か月もたっており、僕は相当気まずい思いで喫茶店を訪れた。

 お友達からお願いします。そんなありきたりな言葉を引っ提げて遅い返事をした僕を、彼女は責めなかった。むしろ、嬉しそうにうなずいてくれた。

 後から聞いた話だと、僕が来ない間、かなり不安だったらしい。自分のせいで不快な思いをさせてしまったのではないかと。それを聞いたとき、僕が申し訳ない気持ちでいっぱいになったのは、言うまでもないだろう。

 お友達として、ということで、僕らがまずしたことは、喫茶店の外で会うことだった。仕事後に喫茶店近くのレストランで待ち合わせて、今更だけれど、と自己紹介をしあったのは、今考えると随分と気恥ずかしいものだ。

 彼女は名前を田所咲といった。二十になりたての大学生で、あの喫茶店はアルバイトということだった。

「僕が十歳の時に生まれたのか…」

 年齢を聞いたときに思わす漏れた言葉に彼女は笑った。僕は内心笑い事ではないぞ、と思いつつも何も言うことができ
なかった。彼女の笑みはどこまでも朗らかで、年齢差なんて全く気にしていないことが明らかだったから。

 彼女に自己紹介してもらった後、僕は重田芳夫といって、近くの薬品会社で営業をしているのだと説明した。彼女はなんだか楽しそうに僕の話を聞いてくれた。

「いつも喫茶店にいらっしゃるの遅い時間ですけど、お仕事大変なんですか」

「そうだね、結構残業もあるからなぁ。でも、急いで帰ってもやることもないと思って、のんびりと帰ってくるせいもあるかも。次の日も仕事と思うと、お酒も控えるしね」

 僕の返事を聞くと、彼女はふふ、と笑った。

「やっぱり自己管理をしっかりしないといけない分、大変ですね。私なんか、平日休日気にせず飲んじゃいますもん」
「お、二十になりたてなのに、結構飲めそうだね」

 彼女は照れくさそうに頭を掻いた。

「強いと思います。かわいげないですよね…」
「僕は一緒に飲んでもらえる方がうれしいよ」
「そういうものですか」
「そういうものなんです」

 僕が言うと、彼女は恥ずかしがって、動揺を隠すように水を飲んだ。

 ああ、かわいいなと思った。思えば、この頃から僕の心は彼女に向いていたのかもしれない。
 
スポンサーサイト

テーマ : 短編小説
ジャンル : 小説・文学

コンテントヘッダー

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

紫矢 陽炎

Author:紫矢 陽炎
紫矢陽炎と申します。
こどもがたくさんいる職場に無事転職しましたー!
読書、ギターを弾くのが趣味です。

よろしくお願いします。

最近の記事
最近のトラックバック
最近のコメント
月別アーカイブ
カテゴリー
FC2カウンター
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索
RSSフィード
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。